第1章 20年経ったボルボ車 その実力を検証する

ボルボの正規ディーラーでメンテナンスした走行距離23万km超の1996年式850T-5Rエステート。その走りをモータージャーナリストの大谷達也氏がレポート。新車発売当時を知る大谷氏は20年ほど経ったボルボ 850T-5Rエステートに、どういった評価を下したのか。

後輪駆動から前輪駆動への歴史的転換期に誕生したのがボルボ 850だが、乗り味は前作700シリーズに近く、クルマ全体におっとりムードが漂っていた。だから“のんびり派”にはいまでも歓迎されるだろうが、“現代派”には「まどろっこしい」と思わせかねない味付けでもあった。その点、T-5Rは、スポーティな設定だけにシャキッとした節度感が味わえる。試乗すると、いまでもコストをたっぷり掛けた古き良き機械ものの良さが息づいていて嬉しくなった。“ドッカンターボ”と思われがちな直5 2.3ℓエンジンは制御が巧みなため、力強いのに扱い易い。まるで20年後のいまに照準をあわせて作られたかのような、エバーグリーンなスポーティワゴンといえる。

同じことは足回りにもあてはまる。デビュー当時は「硬めの乗り心地」と感じた記憶があるが、最新のピレリPゼロ・ネロを履いているせいか、あらためて乗るとゴツゴツ感は控えめで、しなやかさとソリッドさがほどよくバランスしていた。とりわけ感心したのがピッチング(真横から見たときにクルマがシーソーのような動きをすること)をしっかり押さえている点。おかげで4輪が安定したグリップ力を生み出しており、わざと乱暴な操作をしても走行ラインはほとんど乱れない。もっとも、こうしたシャキッとした乗り味が実現できたのも、足回りを丁寧にメンテナンスしたからこそ。消耗品に分類されるダンパーやブッシュ類を新品に置き換えた効果はとりわけ大きいはずだ。

850 T-5Rの持ち味がいまも色褪せずに残っているのは、頑丈極まりないボディがあるからに他ならない。ボディは建物の基礎のようなもの。ここがしっかりしていなければ、どんなに手間暇を掛けてメンテナンスしても期待どおりの効果は得られない。けれども、そこはさすがボルボ。必要な部品が手に入り、それらを丁寧に組み付けることができれば、いまから10年経っても20年経っても、新車さながらのコンディションを保ってくれるはず。インテリアも同様で、北欧生まれらしく「手袋をしたまま操作できる」スイッチ類はサイズが大きめなうえに感触が絶妙で、ボルボの良心が脈々と息づいている。手を掛けるたびに、あなたのボルボへの愛情も甦ってくるに違いない。

NEXT VOLVO 850 ESTATE REFRESH REPORT

850T-5Rエステートに施したメンテナンスの詳細は、次回以降にお伝えする予定。第二章では、パワートレインを中心に高品質の純正パーツを使ったメカニカル系のリフレッシュ内容をレポート。大谷氏が「シャキッとした乗り味」と評価した足回りやエンジンまわりの消耗パーツ、トランスミッションの交換に迫る。

どんなに耐久性に優れているとはいえ、ボディの塗装には初度登録から20年という年月を経たくすみや痛みが見受けられた。また、シートといった内装も汚れやヘタレが生じている。これらを専任のサービス・スタッフの高い技術力によって一新。第三章ではボディや内装まわりを中心としたメンテナンスをレポートする。